初期近代英語期の個人書簡文におけることばの規範化について(言語編)
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概要
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筆者は大津(1988)において18世紀後半から現れだした規範文法の規則は必ずしもラテン文法や論理学だけに従っていたのではなく,当時の語法を反映していた可能性があることを指摘した。これはまた規範文法が出る前にことばの規範化が始まっていたことを示唆するが,本稿ではその文法書以前の規範化がいつ頃から,どの程度進んでいたか,またそれが規範文法の規則とはどのような関係にあったかを探るため,1630年から1760年までの個人書簡の言語を2種類の構文について調査した。その結果,男女間や同じ構文でも別々のタイプの間で語法に開きがあるなかで,対象期間を通じてどちらの構文においても大部分の男性によって指示される優勢な語法があり,これが後に規範文法の規則として取り上げられていたことがわかった。とすると規範文法の規則はただ現実語法に従っていたというのではなく,女性のことばやタイプの異なる小数派の語法を否定した上に成り立っていたわけで,その意味で規範文法は規範的であったと言えよう。
- 大阪外国語大学の論文
- 1993-09-30