高グルコース濃度下培養マウスメサンギウム細胞におけるフィブロネクチン産生亢進に対するアルデヒド還元酵素過剰発現の効果
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概要
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糖尿病性腎症に特徴的な組織像は, 糸球体における細胞外基質 (ECM) の蓄積である。糸球体メサンギウム細胞を高濃度グルコース下で培養すると, ECM産生が冗進ずるが, その機序には不明な点が多い。一方, 糖尿病では, 蛋白質糖化反応およびポリオール代謝を介して, 高反応性ジカルボニル化合物である3-デオキシグルコソン (3-DG) の生成が亢進し, いわゆるカルボニルストレスの一因として合併症進展に関与している可能性が有る。生体内には, この3-DGを非活性物質に代謝する防御機構が存在し, 中でもアルデヒド還元酵素 (ALR) の重要性が指摘されている。今回, 高濃度グルコース条件下の培養マウスメサンギウム細胞 (MMC) におけるフィブロネクチン (FN) 産生冗進機序への3-DGの関与を評価する目的で, ラットALR cDNA組換えアデノウイルスベクターを用いてALRを過剰発現させたMMCを作製し, そのFN産生能の変化を検討した。高濃度グルコース下 (25mM) で培養したMMCは, 正常濃度グルコース下 (5.5mM) の場合に比較してFN産生が亢進したが, ALR過剰発現によって31%抑制され, ほぼ正常濃度グルコース下レベルのFN量となった。この結果は, 糖尿病性腎症でみられる糸球体内ECM蓄積に3-DGによるカルボニルストレスが関与している可能性を示唆しており, 今後の腎症治療を考えていく上で有用な知見と思われた。
- 2003-03-31