肝臓特異的PI 3-キナーゼシグナル抑制マウスの解析
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概要
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PI 3-キナーゼはインスリンの代謝作用の重要な調節因子であるが, 生体においてPI 3-キナーゼの活性抑制がどのような代謝状態の変化をもたらすかは明らかではない。本研究ではアデノウイルスベクターを用いて優位抑制型PI 3-キナーゼ (△p85) をマウス肝に発現させることにより, 肝特異的なPI 3-キナーゼ活性の抑制が生体の糖代謝に与える影響を検討した。△p85をコードするアデノウイルスベクターの経静脈投与により肝特異的な△p85の発現が生じた。△p85投与マウスでは肝でのインスリン依存性のPI 3-キナーゼの活性化やPI 3-キナーゼの下流のエフェクターであるAktのリン酸化は著しく抑制されたが, 骨格筋のPI 3-キナーゼ活性やAktのリン酸化には影響がなかった。△p85投与マウスは高インスリン血症が誘導され, 経口糖負荷により著明な高血糖を呈した。また, 経口糖負荷による肝のAkt, GSK3のリン酸化の増強及びグリコーゲン合成酵素の活性化は著明に抑制され, 肝のグリコーゲン, グルコース-6-リン酸含量の増加も著しく抑制された。以上より, 肝特異的なPI 3-キナーゼ活性の抑制により, 高インスリン血症と経口糖負荷時の高血糖, 及びグリコーゲンの著明な蓄積障害を呈することが明らかとなった。
- 2002-03-29