ウシ関節軟骨細胞の一酸化窒素 (NO) 産生に及ぼすトロンビンの影響
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概要
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凝固因子であるトロンビンは止血・血栓形成ばかりでなく, 炎症や器官発生, 組織修復において様々な生理的作用を示す。近年, 慢性関節リウマチ (RA) 患者の関節液に高濃度のトロンビンーアンチトロンビンIII複合体が存在することや, トロンビンが滑膜細胞の増殖を促進することから, RAの病態形成にトロンビンが関与していると考えられている。そこでトロンビンによる関節軟骨破壊の機序を解明する目的で, 関節破壊の重要な因子である関節軟骨の一酸化窒素 (NO) 産生に及ぼすトロンビンの影響を検討した。ウシ関節軟骨細胞を1U/mlのトロンビンで刺激すると有意なNO産生の増加とiNOS mRNAの発現増強が認められた。一方, このトロンビンによるNO産生とiNOS mRNAの発現増加は, 核内転写因子NF-κBの活性化阻害剤であるPDTC存在下 (100μM) で完全に抑制された。また, トロンビン受容体のひとつである protease-activated receptor-1 (PAR-1) のアゴニストを用いてウシ関節軟骨細胞を刺激したが, NO産生には影響がなかった。以上のことからトロンビンによる関節軟骨細胞のNO産生刺激にはNF-κBの活性化が重要であり, iNOS mRNA発現レベルで調節を受けていることが明らかとなった。さらに, このトロンビンによる関節軟骨細胞のNO産生調節はトロンビン受容体 (PAR-1) 以外の受容体を介して行われている可能性がある。
- 2002-03-29