誘導型NOS抑制による1型糖尿病の発症予防に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1型糖尿病は, 自己免疫反応により膵β細胞が破壊され発症に至ると考えられているが, その正確なメカニズムはいまだ不明である。現在1型糖尿病の膵β細胞傷害機構は (1) T細胞による perforin-granzyme を介したネクローシスとFas-FasL (Fas ligand) 経路を介したアポトーシス (2) サイトカインによるNOを介した細胞傷害機構の2種類に大別される。特に膵島炎におけるβ細胞の破壊は種々の活性酸素により引き起こされることが示唆されている。本研究は, 新しいiNOS阻害剤 (ONO-1714) を用いて, NO産生を介した細胞傷害を抑制することにより自己免疫性膵β細胞傷害を抑制できるかどうかについて検討した。NODマウス由来にインスリノーマ細胞MIN6N9aに15mM STZを加え20分間ONO-1714の存在下で培養を行なった。STZ処置によりNOの有意な増加を誘発したがONO-1714はNO産生を抑制できなかった。一方, MIN6N9a細胞をONO-1714存在下にIL-Iβ, TNF-αとIFN-γで培養するとNO産生は約50%減少した。1型糖尿病のモデル動物であるSTZ少量頻回投与マウスへのONO-1714の皮下注射はコントロール群と比較して, 高血糖を抑制し, 組織学的にも膵ラ島の破壊を抑制していた。これらの結果はNO産生を介した細胞傷害が1型糖尿病における膵β細胞傷害機構の一つであることを示唆し, この経路の抑制が治療への可能性のひとつであることが示された。
- 神戸大学の論文
- 2003-03-31