レシチン コレステロール アシルトランスフェラーゼ (LCAT) 異常症の分子生物学的検討
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概要
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稀な常染色体劣性遺伝性疾患である家族性LCAT欠損症患者の遺伝子解析を行い, LCAT遺伝子の第6エクソンに一塩基置換 (G→A) を同定した。本変異により, 患者LCATの293番目のメチオニンがイソロイシンに置換しているものと考えられた。PCR-RFLPを用いた家系調査で, 本変異の有無と疾患との間に関連が認められ, in vitro site-directed mutagenesisを用いて作成した変異体LCATの酵素活性は野生型の8%に低下していた事より, 本変異が患者血漿LCAT活性低下の原因と思われた。本症の表現型は heterogenous であり, その多様性には残存LCAT活性のみならず異常LCATのリポ蛋白基質特異性の変化も関与する事が示唆されている。解析症例は臨床検査所見から部分型LCAT欠損症と考えられたが, 本症の一亜型である魚眼病との相違を明らかにするため変異LCATの基質特異的エステル生成速度を検討したところ, 魚眼病患者で見られたThr^<123>→Ile変異を持つ組換えLCATがLDLに対するエステル化能 (β-LCAT活性) を保持しているのに対して患者変異LCATはβ-LCAT活性を欠いていた。従って, 本症例は典型的な古典型LCAT欠損症とは若干異なる検査所見を呈するものの, 変異LCATの基質特異性から魚眼病とするのは否定的であり, 部分型LCAT欠損症とするのが適切と考えられた。
- 2003-03-31