MLL遺伝子再構成陽性ヒトBリンパ性白血病細胞株におけるバルプロ酸によるアポトーシスの誘導
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概要
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ある種の短鎖脂肪酸は, 様々な腫瘍細胞に分化やアポトーシスを誘導する事が知られている。バルプロ酸は短鎖脂肪酸の一種であり, 抗痙攣薬として広く臨床応用されている。MLL遺伝子再構成は乳児白血病および二次性白血病に多くみられる遺伝子異常であるが, この異常を持つ白血病は多剤併用化学療法が進歩した現在でも予後不良である。今回, MLL遺伝子再構成を有するヒトBリンパ性白血病細胞株の生存に対するバルプロ酸の作用を検討した。バルプロ酸は今回の実験に用いた3種類のMLL遺伝子再構成陽性ヒトBリンパ性白血病細胞株すべての生細胞率を濃度依存性に低下させた。特にそのうち2つの細胞株では, 抗痙攣薬としての治療閾値内の濃度で高率に生細胞率の低下が認められた。この細胞死はプレドニゾロン耐性細胞株に対しても誘導され, バルプロ酸はプレドニゾロンとは異なる機序で作用するものと考えられた。バルプロ酸処理による形態変化の観察では, 細胞の縮小とクロマチンの濃縮が認められた。またアガロースゲル電気泳動によりDNAの断片化が証明された。アネキシンVで染色した細胞のフローサイトメトリーによる解析では, バルプロ酸処理によりフォスファチジルセリンが細胞膜表面へ表出されることが明らかとなった。以上の所見よりバルプロ酸がこれらのヒトBリンパ性白血病細胞株にアポトーシスを誘導する事が明らかとなった。バルプロ酸は副作用の少ない抗白血病治療薬として応用できる可能性がある。
- 2001-12-20
著者
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