C型肝炎ウイルス非構造蛋白NS4Aの翻訳抑制作用
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概要
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C型肝炎ウイルス (HCV) のNS4AはNS3セリンプロテアーゼ活性増強作用やNS5Aの高リン酸化等にも関与している蛋白であるが, その他の機能についてはほとんど知られていない。今回の我々のCATアッセイを用いた研究により, NS4Aは遺伝子産物 (蛋白) の発現を抑制することが明らかとなった。NS4Aによる遺伝子産物発現の抑制のメカニズムを解析するために, まずRT-PCRを用いて転写レベルで解析したがNS4Aによる抑制は認められず, それ以降の段階が重要であることが強く示唆された。そこで, 試験管内翻訳反応系でNS4Aの翻訳機構に及ぼす影響を解析したところ, 遺伝子産物発現量はコントロールに比べて抑制された。以上よりNS4Aが翻訳抑制作用を有することが示された。さらに今回, NS4A欠失変異体を用いて翻訳機構抑制に関与するNS4Aの責任領域を解析したところ, N末端18アミノ酸が翻訳機構抑制に必要な領域であることが分かった。また, NS4AはNS3のN末端部と結合し複合体を形成することが報告されているため, その複合体の翻訳抑制に及ぼす影響についても検討した。それぞれに抑制作用があったが, その効果にはばらつきを認めた。いずれにしても, NS4A自身が翻訳抑制作用を有することは明らかであり, HCVにおいてNS4Aが宿主細胞内で翻訳を抑制することにより, その持続感染に有利な働きを行っている可能性が示唆された。
- 神戸大学の論文
- 2001-03-31