潰瘍大腸炎とHLA遺伝子 : 遺伝素因および増悪因子としての検討
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概要
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潰瘍性大腸炎 (ulcerative colitis : 以下UC) とHLAとの相関を, 血清学的タイピング, DNAタイピングにより検討すると共に, UCと最も強い正相関を示すDRB1^*1502対立遺伝子の有無で発症年齢, 罹患範囲, 重症度, ステロイド治療について比較検討した。UCは対照に比して, 血清学的タイピングでは, B52 (49.2% vs 19.1% ; p<0.0001), DR15 (66.2% vs 32.4% : p<0.0001) が高率に認められた。DNAタイピングでは, 連鎖不均衡にあるDRB1^*1502 (52.3% vs 16.9% ; p<0.0001), DQA1^*0103 (53.8% vs 30.1% ; p=0.0009), DQB1^*0601 (58.5% vs 28.7% ; p<0.0001), DPB1^*0901 (44.6% vs 16.9% ; p<0.0001) がそれぞれ高率に認められた。DRB1^*1502対立遺伝子の有無による臨床型の比較では発症年齢, 罹患範囲, 重症度に関しては有意な差は見られなかったが, 全てのDRB1^*1502陽性例ではステロイド投与量が年平均3g以上または総投与量が5gを超えており, 年平均投与量は2.4±3.78gで, 陰性例の0.48±0.50gに比して多かった。DRB1^*1501とDRB1^*1502を区別するDRβ鎖86位はHLA分子の構造上α鎖とβ鎖の境界に位置し, 抗原ペプチドとの結合や立体構造上の安定性に重要な働きをしている部位と考えられ, DRB1^*1502はUCの疾患感受性およびその増悪に関与していると考えられた。
- 神戸大学の論文
- 2000-03-31