熱帯熱マラリア原虫蛋白質リン酸化酵素の生化学的解析
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概要
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熱帯熱マラリア原虫の, 赤血球寄生適応の分子メカニズムを解明するために, ゲル内リン酸化法を用いて, 熱帯熱マラリア原虫の蛋白質リン酸化酵素の生化学的解析を行った。7つのリン酸化酵素が検出され, それぞれの分子量は, およそ, 170kDa, 130kDa, 110kDa, 64kDa, 56kDa, 42kDa, 37kDaであった。Ca^<2+>の存在下, 非存在下で, リン酸化反応を観察することにより, 56kDaの酵素が, Ca^<2+>依存性の酵素であることが示された。カゼイン, ヒストン, および, ミエリン塩基性蛋白質 (MBP) を用いて, 基質特異性を調べた結果, 56kDa, 42kDaおよび37kDaの酵素は, 3つの基質すべてをリン酸化した。一方, 170kDa, 130kDaおよび64kDの酵素は, MBPのみをリン酸化した。これに対し, 110kDaの酵素は, 3つの基質のいずれをも認識しなかった。検出された7つのリン酸化酵素の活性は, マラリア原虫の赤内型サイクルにおいて, 経時的に変化することが観察された。110kDaの酵素の活性は, 最も顕著な変化を示し, 分裂体期に特異的に増強していた。これらの結果から, 110kDaの酵素が, 原虫の多数分裂 (schizogony) に重要であり, 原虫のある特定の蛋白質をリン酸化することにより, その役割を果たしている可能性があると考えられる。
- 神戸大学の論文