新生仔ラットの低酸素虚血負荷における Heme oxygenase-1蛋白及びmRNAの発現について
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概要
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Heme oxygenase (HO) はヘムを分解し, ビリベルジン, 一酸化炭素, 鉄を生成する反応を触媒する酵素である。その isozyme の一つであるHO-1は, 通常の状態のラット脳では, 限られた領域の神経細胞にわずかに存在するのみである。しかし, 様々な刺激によりHO-1発現は強力に賦活される。我々は, 新生仔ラットの低酸素虚血モデルの脳を用いてHO-1のmRNAと蛋白の発現量を経時的に調べ, HO-1蛋白が結紮側の大脳皮質, 海馬, 視床の一部, 外包において, 低酸素虚血負荷後3時間から36時間で増加していることを明らかにした。大脳では, HO-1蛋白は結紮側の海馬を含む部分において, 最も多く発現しており, 低酸素虚血負荷後12時間で最高値に達した。HO-1 mRNA量は負荷終了時には, すでに増加し始めており, 負荷終了後3時間で最高値に達し, 以後減少した。HO-1蛋白発現量の時間的経過は, HO-1 mRNA発現量の時間的経過とほぼ一致し, 新生仔ラットの低酸素虚血モデルは, 成獣ラットの虚血モデルよりも, HO-1発現が早期に誘導されると考えられた。これらの結果から, HO-1による防御機構は, 発達途上にある新生仔脳においても低酸素虚血負荷後の早期の段階で機能し, 周産期の低酸素性虚血性脳障害の予防に寄与していると推測された。