感受性期における片眼摘出ラット大脳視覚野でのパルブアルブミンの発現
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概要
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視覚の発達には感受性期が存在し, 弱視の治療はその感受性期内に行うことが肝要である。現在, 弱視治療の中心は屈折矯正と健眼遮蔽法であり, 感受性自体に作用する薬物治療は行われていない。新しい有効な弱視治療を開発するためには, 感受性期における視覚入力に対する神経学的指標を得ること, あるいは大脳視覚野での神経可塑性の細胞・分子機構, 特に, カルシウムイオンの働きを解明することが重要である。そこで本研究では, 片眼摘出した感受性期のラットにおいて, 大脳視覚野での両眼競合の神経学的指標とされているパルブアルブミン蛋白質とmRNAの発現を調べた。これまでの報告とは異なり, パルブアルブミンの発現は感受性期内の片眼性の視覚入力遮断による影響を受けず, 少なくともラットにおいては, パルブアルブミンの発現調節は神経細胞の活動性や視覚入力の両眼競合に一義的には依存しないと結論した。感受性期に眼優位可塑性を形成する過程で, パルブアルブミン独自の調節機構やGABA作動性神経細胞系を含んだ調節機構によって, パルブアルブミンの発現が視覚入力の変化によらず, 一定に維持されることが重要な意味を持つと考えられた。
- 神戸大学の論文
- 1999-03-31