抑制性サイトカイン産生膵ラ島移植によるインスリン依存型糖尿病の遺伝子治療に関する研究
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概要
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本研究では, インスリン依存型糖尿病 (IDDM) のモデル動物である NOD (nonobese diabetic) マウスに, 抑制性サイトカイン遺伝子をアデノウイルスベクターを用いて導入した膵ラ島移植を行ない自己免疫機序による拒絶反応の阻止を試みた。糖尿病発症NODマウスに, IL-12p40およびIL-10遺伝子をアデノウイルスベクターを用いて導入したNODマウス膵ラ島を移植した。IL-12p40産生膵ラ島移植では4週間以上の移植片の生着を認めたが, IL-10産生膵ラ島移植では移植片の長期の生着は得られなかった。組織学的検討では, IL-12p40産生膵ラ島移植では移植7日および60日後で正常膵ラ島構造を維持し軽度の単核球浸潤のみ認めたが, IL-10産生膵ラ島移植では移植7日後ですでに著明な単核球浸潤を伴い膵ラ島構造も破壊されていた。また, RT-PCR法での移植片局所のサイトカインの解析より, 移植片の長期生着のメカニズムとして, IL-12p40産生膵ラ島移植ではIFN-γ産生細胞の減少とTGF-β産生細胞の誘導により免疫寛容が成立した可能性が示唆された。以上より, IL-12p40産生膵ラ島移植では移植片の長期生着が可能であり, 今後のIDDM発症後の治療法として膵ラ島移植を用いた遺伝子療法の確立への第一歩と考えられた。
- 神戸大学の論文
- 1998-03-31
著者
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