ヒト食道癌における細胞周期制御遺伝子p21^<CIP1/WAF1>,p16^<INK4a>のmRNA発現に関する検討
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概要
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近年,悪性腫瘍細胞における細胞周期異常が注目され,悪性細胞におけるサイクリン等の細胞周期関連遺伝子の検討が盛んに行われている。p21^<CIP1/WAF1>,p16^<INK4a>は,1993年,細胞周期制御遺伝子としてクローニングされ,免疫組織化学染色,遺伝子変異等の検討は行われているものの,食道癌臨床標本を用いたmRNAレベルでの検討の報告は数少ない。今回,千葉大学第二外科において切除された食道癌臨床標本を用いp21^<CIP1/WAF1>,p16^<INK4a>遺伝子のmRNA発現につき以下の如くの検討を行った。対象と方法:対象は食道癌24例であり,そのうち11例に対してp21^<CIP1/WAF1>,14例に対してp16^<INK4a>遺伝子のmRNA発現を検討した。食道癌24例それぞれの新鮮切除標本より,癌部,非癌部別々にCsCl-超遠心法にてRNAを抽出し,CIP1 cDNA, p16cDNAをprobeとしてNorthern blot hybridizationを行い,p21^<CIP1/WAF1>,p16^<INK4a> mRNA発現を癌部,非癌部で比較検討した。成績:食道癌組織においてp21^<CIP1/WAF1> mRNAの発現は11例中6例(54.5%)において,非癌部に比較し,癌部における明らかな低下が見られた。p16^<INK4a> mRNA発現は14例中10例(71.4%)において,非癌部に比較し廃部において同程度,もしくは軽度の発現減弱が見られるものの,残る4例(28.6%)では逆に癌部における大幅な発現上昇が見られた。考察:食道癌組織においては,細胞周期異常の要因としてp53遺伝子からp21^<CIP1/WAF1>,TGF-βからp16^<INK4a>以外の経路の存在が示唆された。さらにp16^<INK4a> mRNAの異常高発現が見られたことにより,これらの症例ではp16^<INK4a>遺伝子変異の存在が示唆された。
- 千葉大学の論文
- 1998-10-01
著者
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