消化管癌内視鏡的蛍光診断における基礎的研究 : 癌固有蛍光の観察及び物質の同定
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概要
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近年,蛍光物質であるヘマトポルフィリン誘導体が癌組織に親和性を示す性質を利用し,これを体内へ投与することにより診断及び治療を行う研究が進められている。これに対し,1980年福富らは,癌組織自体に固有の蛍光が存在することを報告し,以降癌固有蛍光に関する研究も諸家により報告されるようになった。本研究では,消化器癌における固有蛍光を観察し,その存在を明らかにするとともに,蛍光物質を検出同定し,経内視鏡的診断法への応用の可能性を考察した。対象は外科的に切除された消化器癌(食道癌,胃癌)新鮮摘出標本39例,方法は蛍光観察システムとして,励起光源にアルゴンレーザーPRT100,蛍光検出装置に臓器反射スペクトル分析装置TS200を改良し使用した。蛍光観察はカットフィルターを用い肉眼で行った。判定は肉眼で赤色蛍光を認め,かつ蛍光波長を検出できたものを蛍光(+)とした。蛍光物質同定は,組織抽出液をHPLCにて測定,検出した。蛍光は癌組織に散在性に見られ,切片においても深部癌組織に蛍光が観察された。波長測定では630nm,690nmにピークを認め,ポルフィリンの波長と一致した。蛍光は39例中28例の癌組織に認められ,正常組織には認められなかった。蛍光物質検出の結果,蛍光部にプロトポルフィリンが蓄積していることがわかった。ポルフィリンの蛍光を観察するためには,励起光源として,励起効率の良い紫外光を用いるほうが望ましい。紫外線光源を用い蛍光観察を行ったところ,内視鏡下に明瞭に固有蛍光が観察された。以上の結果から,今後観察システムを確立することにより,癌蛍光診断への応用が可能となることが示唆された。
- 千葉大学の論文
- 1998-08-01
著者
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