インスリン非依存型糖尿病における血管平滑筋細胞の形質の変化とその機序
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概要
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動脈硬化巣の形成機序においては,血管平滑筋細胞(SMC)の形質変化が重要な役割を果たしている。糖尿病における動脈硬化の発症,進展には,血糖の上昇を生じる以前より認められる代謝異常や遺伝的背景が大きく関与することが知られている。これまでインスリン依存型糖尿病(IDDM)のモデル動物では,糖尿病発症後に動脈壁中膜SMCに血小板由来増殖因子(PDGF)β受容体が過剰に発現し,内膜傷害時の内膜肥厚に促進的に働いていることが示唆されている。しかしこのようなSMCの形質変化のインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)への関与についてはいまだ明らかではない。そこで,NIDDMのモデル動物であるOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF)ラットを用いて,動脈壁の上述の変化について検討した。OLETFラットの培養SMCの増殖能は,10%牛胎児血清存在下で,コントロールであるLong-Evans Tokushima Otsuka (LETO)ラットSMCに比べ亢進していた。その増殖亢進は,主としてPDGF-ABおよび-BBによりもたらされていると考えられた。しかも,0LETFラットの成長の経時的観察により,SMCの増殖能は糖尿病発症以前より亢進していることが明らかとなった。さらに,LETOラットに比べ,糖尿病発症以前のOLETFラット動脈壁中膜におけるPDGFβ受容体の蛋白レベルでの過剰発現が確認された。OLETFラットでは,動脈壁中膜におけるPDGFβ受容体の過剰発現とともに,フィブロネクチン(FN)の過剰発現も認めた。またOLETFラットSMCにおいてのみ,FN産生はトランスフォーミング増殖因子(TGF)β1により刺激された。そこでTGF-β受容体について検討したところ,II型受容体蛋白がOLETFラット動脈壁中膜で過剰に発現していた。これらのことより,OLETFラットでは,糖尿病発症以前より動脈壁SMCにおけるPDGF β受容体の過剰発現という形質変化を生じており,この変化にはTGF-β-FN系が促進的に関与している可能性が考えられた。
- 千葉大学の論文
- 1998-06-01
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