実験的肺転移マウスメラノーマ腫瘍に浸潤するリンパ球機能の解析
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概要
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腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は腫瘍免疫に重要な役割を果たすことが知られている。本論文では,実験的肺転移メラノーマ腫瘍巣より回収したTILのサイトカイン産生および細胞傷害活性を解析し,TILの免疫学的な役割を調べた。C57BL/6の尾静脈よりB16メラノーマを静注し実験的肺転移腫瘍を作成した。この動物に抗Vα3.2抗体を投与すると肺転移巣の数が減少した。このことよりVα3^+T細胞はメラノーマ細胞に対する細胞傷害活性に抑制的に働くことが分かった。また腫瘍より分離した細胞群からVα3^+T細胞を取り除いた群では細胞傷害活性は上昇し,再度Vα3^+T細胞を加えた群では細胞傷害活性が低下した。これらの結果よりVα3^+T細胞はin vitroにおいても細胞傷害活性抑制作用を有することが判明した。しかしEL-4マウスリンパ腫細胞に対するキラーT細胞の機能には影響を与えなかった。このことはVα3^+T細胞の抑制作用に抗原特異性があることを示唆している。このVα3^+T細胞のサイトカイン産生パターンをRT-PCR法およびサザンブロット法にて調べたところ,IL-2,IL-4は発現していないものの,IL-10,TGF-β,IFN-7は発現しており,このことはVα3^+T細胞が従来のTh1/Th2の分類に属さない型のT細胞であることを示唆している。さらにin vitroで抗B16メラノーマキラーT細胞にTGF-βを投与したところ,B16メラノーマに対する細胞傷害活性が低下することが判明した。このことから, Vα3^+T細胞の細胞傷害活性に対する抑制作用にTGF-βが重要な役割を担っている可能性があることが示唆された。
- 1998-06-01