炭酸ガス負荷の心拍変動への影響 : 周波数解析法による検討
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概要
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呼吸運動に一致した心拍の変動には,呼吸中枢の周期的活動リズムが心血管中枢に伝播する中枢神経経路と,呼吸運動により生ずる血圧変動に対する圧受容体を介する循環反射経路が関与すると考えられている。中枢神経経路を介した呼吸中枢活動リズムの心拍変動への影響を明確にするため,セボフルラン麻酔下に大量の筋弛緩薬により呼吸筋を麻庫させた患者で,人工換気を一定とし,吸気炭酸ガス濃度を調節(0%-3.5%-7%-3.5%-0%)し,炭酸ガス分圧変化の心拍および収縮期血圧変動への影響を周波数解析法により検討した。人工換気周波数(0.167Hz)を中心とする人工換気周波成分(P_V:0.125-0.2Hz)と高周波成分(P_H:0.2-0.5Hz)に分け,高速フーリエ変換法でパワースペクトルを算出した。炭酸ガス分圧は呼気終末で測定し,その経時的変化を25-35mmHg, 35-45mmHg, 45-60mmHg, 45-35mmHg, 35-25mmHgに分けた。各炭酸ガス分圧レベルで,平均加算した人工換気周波数成分(P_V)と高周波成分(P_H)および高周波成分の人工換気周波数成分に対する比(P_H/P_V)を比較した。心拍変動の高周波成分(P_H)は45-60mmHgの炭酸ガス分圧レベルで有意に増加し,その人工換気周波数成分に対する比(P_H/P_V)も著しく増大した。このことは,炭酸ガス刺激で心拍に人工換気より短い周期の変動が現れることを示した。収縮期血圧変動の高周波成分(P_H)は変化せず,その人工換気周波数成分に対する比(P_H/P_V)は極めて小さかった。このことは,収縮期血圧は炭酸ガス分圧にかかわらず人工換気と同期し変動することを示した。以上より,高炭酸ガス分圧時にみられた心拍変動の高周波成分(P_H)の増加は,炭酸ガス刺激により完遂した呼吸中枢の周期的活動リズムを反映したと考えられた。さらに,人工換気下に筋弛緩薬により呼吸筋を麻痺させた場合でも,呼吸中枢の活動リズムの増加を心拍変動の変化から非侵襲的に推定しうることが示唆された。
- 千葉大学の論文
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