マクロファージ泡沫化過程における細胞内脂質転送蛋白(Sterol Carrier Protein_2: SCP_2)の発現調節機構
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概要
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初期動脈硬化病巣においてはマクロファージが変性low density lipoprotein (LDL)を取り込んで泡沫細胞となる過程が重要と考えられている。コレステロールの細胞内輸送・代謝に関与する最も有力な細胞内脂質転送蛋白と考えられているsterol carrier protein_2 (SCP_2)は変性LDLの取り込みに伴いマクロファージが泡沫化する過程においてその含量が増加する事が明らかにされている。今回,マクロファージ泡沫細胞形成過程におけるSCP_2の遺伝子発現とその調節機構について検討を行った。まず変性LDLであるAcetylated-LDL (Ac-LDL)によりマクロファージが泡沫化しSCP_2含量の増加する際,mRNAレベルの変動をNorthern blot法で解析したところSCP_2のmRNAの増加が認められた。次にこのSCP_2の遺伝子発現が増強する機序について検討した。acyl-CoA: cholesterol acyltransferase (ACAT)阻害剤であるEAB-309の添加によりAc-LDLによるマクロファージ中コレステロールエステルの増加は著明に抑制され,遊離コレステロールは増加した。その際,この細胞中のSCP_2含量とmRNAレベルの増加が認められた。さらに,この増加が細胞内遊離コレステロールの増加によるものかどうかを調べる目的で25-OH cholesterolを添加したところSCP_2含量,mRNAレベルは増加した。しかし,Ac-LDLによるSCP_2増加がAc-LDLがマクロファージのスカベンジャー受容体を介したシグナルによるものかどうかを明らかにするためのmaleylated bpvine serum albumin (Mal-BSA)の添加は影響を与えなかった。これらの成績からAc-LDLによるマクロファージの泡沫細胞形成過程におけるSCP_2の増加はその遺伝子発現の増強によること,その発現増強した機序としてスカベンジャー受容体からのシグナルよりも細胞内遊離コレステロールの増加が重要であることが明らかとなった。SCP_2の泡沫細胞形成における重要性を示唆し,動脈硬化の脂質沈着過程の病因解明上重要な知見と考えられた。
- 1997-02-01
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