ヘミングウェイの生と死 (二) : (二) Indian Camp
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
シンボリズムのスタイルにハードボイルドのスタイルを乗じた方法で、言葉を究極まで削りに削ることによって、作品を磨きに磨こうとしたヘミングウェイは、両スタイルの行き着くところの一つとして、主人公が一言も言葉を発しない物語りの創作という、至難の挑戦を試みた。しかも処女作品集とも言える短編集に、巻頭の物語りとして、その挑戦の結果である作品 (Indian Camp) を載せた。この作品で、わずかに言葉を発するのは、カメラアイの役目を負わされているニックを除けば、白人たちだけで、主人公であるインディアンの夫をはじめ、他のインディアンたちも一言も言葉を発しはしない。かくして主人公であるインディアンの夫の感情と千思万考は、言葉を発しないという負の行為、および壁に向かって寝返りをうつという動作によって表現され、さらには彼の自殺という行為とその方法ならびに自殺直後の姿勢に関する描写によって、彼の追い詰められた苦境の中での、高潔で愛に溢れた人間としてのありようが、表現されているのである。
- 1999-03-15
著者
関連論文
- ヘミングウェイの生と死 (二) : (二) Indian Camp
- ヘミングウェイの生と死 : (一) The End of Something
- バーナード・マラマッドの愛の理想
- バーナード・マラマッドの『アシスタント』における自己改革