戸坂潤の啓蒙論とジャーナリズム : 言論の方法と効用について
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概要
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戸坂潤の一九三〇年代半ばにおける評論活動は、その評論活動自体についての方法と効用意識の明確さにおいても注目されるものであった。彼の総合雑誌を主たる舞台とする評論活動が、ジャーナリズム論という反省された言論の方法と効用意識と並行し、それに支えられていたということは、顕著なことがらであった。小稿は、戸坂潤のこの時期の評論が具体的に何を対象とし、どのような批評を加えたかという評論の具体的分析を試みようとするのではなく、関心の位相を右の点に限定しているものである。そこでは、所謂「人民戦線」論の実質上指示する領域が、戸坂潤によって「理論的ジャーナリズム」と呼ばれた他ならぬ総合雑誌ジャーナリズムの世界であることが摘示される。「殿軍の将」とも評される戸坂潤のオルガナイザーとしての評価についてここでは何もつけ加える用意はない。ただ政治的、思想的な壊滅、壊走状況の中で、こうしたジャーナリズム論、又はジャーナリズムに対する依拠の仕方には、それに対応する歴史的な系譜が回想されている、といってよい。戸坂潤のジャーナリズム論は、そうした位相における史的な総括というべき基本的特性あるいは歴史的特性を有していると考えられる。
- 跡見学園女子大学の論文
- 1983-03-15