アイソトープ法による胃排出能測定からみた糖尿病、単純性肥満、神経性食思不振症の上腹部不定愁訴の病態生理学的解析
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概要
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自然流動食OKUNOS-A200mlを試験食とするアイソトープ法にて胃排出能を測定した。標識核種には<99m>^Tc-DTPAを使用し,対象者は,健常人21例,糖尿病患者46例,単純性肥満7例,神経性食思不振症6例で,いずれも消化器に器質的疾患のない者であった。胃排出能の検討には,胃排出パターンとともに,試験食の50%が胃より排出される時間(T1/2) を代表値として用いた。健常人では,胃部不定愁訴を有する者は,無症状の者に比較して若干の胃排出遅延がみられたが,T1/2は各々, 53.2±12.8分, 45.1±10.9分(mean±SD)で有意差はなかった。糖尿病患者では,胃部不定愁訴を有する群(T1/2, 67.7±24.6分)は無症状の群(T1/2,50.5±17.4分)と比べて胃排出遅延が認められた(p<0.02)。糖尿病性三大合併症(網膜症,腎症,末梢神経障害)を有する群と合併症のない群に分けて検討すると, T1/2は各々,68.1±24.6分, 43.5±14.8分で,合併症のある群にあきらかな胃排出遅延が認められた(p<0.005)。以上より,糖尿病患者の胃排出遅延は糖尿病性合併症の一分症であり,臨床的には上腹部不定愁訴の原因と考えられた。単純性肥満例の排出パターンには一定の傾向はみられなかった。神経性食思不振症では胃排出遅延が顕著であり,神経性食思不振症にみられる食後の腹部膨満感,嘔吐等の臨床症状と胃排出能との関連性が示唆された。すなわち,糖尿病患者,神経性食思不振症患者の胃排出能測定は,これらの疾患の病態把握と,かつ治療上の指標として有効と思われる。
- 神戸大学の論文
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