血清膵分泌性トリプシンインヒビター(PSTI)値測定の臨床的意義
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概要
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膵疾患,腎不全,悪性腫瘍患者の血清膵分泌性トリプシンインヒピター(PSTI)値を測定し,その上昇機序を解明し,血清PSTI値測定の臨床的意義を検討した。重症急性膵炎患者の血清PSTI値上昇の程度及び高値持続時間は軽症急性膵炎患者に比べて高度かつ長時間であった。急性膵炎における血清PSTI値の変動は他の膵酵素の変動と明らかに異なっていた。一方,慢性膵炎・膵全摘後患者の血清PSTI値はすべて正常範囲内にあった。腎機能の低下と逆相関して血清PSTI値は上昇したが,血清クレアチニン値の上昇程度に比べると血清PSTI値の上昇は異常に高かった。種々の臓器から生じた悪性腫瘍患者で血清PSTI値は高値を示した。特に進行癌症例での血清PSTI高値を示す頻度が高かった。以上より,血清PSTI値測定は急性膵炎の重症度,予後判定に有用であるが,膵外分泌機能低下の指標とはならない。急性勝炎における血清PSTI値上昇は膵腺房細胞破壊に伴って血中へ放出されたPSTIとacute phase reactantとしてのPSTIが関与していると推測される。腎不全患者ではPSTI腎からの排泄障害と,腎・尿路系でのPSTI産生とが相俟って異常高値を示すと推測される。従って,急性膵炎,腎不全を除外すると血清PSTI値測定による悪性腫瘍の診断率は高く,有用な腫瘍マーカーとなりうる。
- 神戸大学の論文
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