数の恐怖 : ジャック・ロンドンの短篇小説に関する一考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ジャック・ロンドンの短篇小説の主人公には共通した傾向がみられる。それは「数」を数える行為に異常なほど執着を示す点である。数える行為(たとえば反復される工場労働の動作回数)によって主人公の未来が予測され,産業社会の機械人間におとしめられることを防いだ主人公が「背教者」のジョニーである。そこにはジョニーの意志が明確に存在する。しかし,他の主人公たちは「数」に関連した行為(時計をみる,気温を測る,距離,速度を計るなど)を意志行為として示すものの,読者あるいは全知の作者ロンドンの視点からすれば,無意識的行為に反転してみえて/みせてしまう。定型化された社会規範のもとで示す意志行為が,じつは意志の作用によらない反復にすぎないことをロンドンの主人公の多くが物語る。
- 2005-03-31
著者
関連論文
- 数の恐怖 : ジャック・ロンドンの短篇小説に関する一考察
- Jack Londonの"The Red One"覚え書き(英米の言語と文化)
- Sister Carrie論 : 序論
- 『海の狼』試論
- ジャック・ロンドンにおける田園主義小説の形成をめぐって