理論とセラピー : ナラティブセラピーと「科学」としての心理学に関する考察
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概要
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本論は,心理学における理論,教育,研究とセラピーの関係,及び,主流の心理学とラディカルな心理学の関係に関わる問題について論じたものである。とくに,学部および大学院での学生たち-フェミニストや社会構成主義者さらに他のラディカルな立場をとる研究者たちに抵抗を示す者たち,もしくは,それらを喜んで受け入れようとする者たち-との日々の教育実践の中で,現在,心理学の分野を指導する人たちの中での関心と論争をいかに示し得るかという点について考察している。その際,いずれの立場に対しても,次のような2つの相補的な方略について検討している。それは,a.現在の文献(とくに,幅広い主流の理論と調査に関するもの)とそれに基づく専門家たちの実践を学生が批判する能力を高め,b.ポストモダンの立場にたつ人々による異文化の心理学の発展を通じて,人間の発達についての新しい視点を導入するための方法を見出すことである(とくに,日本の社会がもっている諸概念と洞察を参照することによって,未だにヨーロッパ中心主義から抜けきれない主流の心理学を脱中心化し得るために)。こうした包括的な文脈の中で,ナラティヴカウンセラーもしくはセラピストの養成に関するいくつかの個別の問題についても考察している。
- 2003-03-01