唇顎口蓋裂患者の早期二次的顎裂部骨移植術における骨架橋形成に及ぼす因子の検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は,唇顎口蓋裂患者の二次的顎裂部骨移植後の骨架橋の経時的変化を,Van der Meijらの方法を改良し,画像解析ソフトウエア-SIM/Plant^<TM> Software(Materialise NV,Belgium)を用いて定量的に分析し,骨架橋の形成に影響を及ぼす諸因子,特に側切歯歯胚の移動・萌出の影響を検討した.対象は,二次的顎裂部骨移植術を施行された26症例とした.Computed tomography(CT)画像をもとに顎裂部に移植された骨の体積(V1)および6か月後に形成された骨架橋の体積(V2)を測定し,骨架橋形成率Rv=V2/V1×100とした.また,骨架橋の体積(V2)に占める歯の体積(Vt)を計測し,歯牙占有率Rt=Vt/V2×100とした.これらの計測結果をもとに 1.側切歯歯胚陽性群と側切歯歯胚陰性群の二群問で,歯牙占有率(Rt)および骨架橋形成率(Rv)を比較 2.歯牙占有率(Rt)と骨架橋形成率(Rv)との相互の関連 3.その他の因子{顎裂幅,顎裂部体積(V1),性別,移植時年齢}と骨架橋形成率(Rv)との関連を検討した.その結果,術直後の移植骨の体積(V1)は平均1.36ml,術後6か月の骨架橋の体積(V2)は平均0.73mlとなり,骨架橋形成率(Rv)は平均53.27%となった.また,歯牙占有率(Rt)は平均11.84%で,歯牙占有率(Rt)と骨架橋形成率(Rv)との間に弱い正の相関関係が認められた.側切歯歯胚陽性群と側切歯歯胚陰性群の二群問で歯牙占有率(Rt)と骨架橋形成率(Rv)とを比較したところ,ともに側切歯歯胚陽性群が有意に高かった.側切歯歯胚が骨内に移動し萌出するためにはその部位の骨吸収が必要と考えられるが,骨架橋の体積全体としては減少していなかったことから,歯胚の移動・萌出は骨吸収とともに骨の誘導・添加を伴う現象であることが推測された.唇顎ロ蓋裂患者で側切歯歯胚が認められた場合には,側切歯の萌出誘導を促して良好な骨架橋を形成することを目的に,犬歯萌出時期より早期の5〜7歳に二次的顎裂部骨移植術を施行することは,その後の健全な歯列・咬合の育成にとって有意義と思われた.
- 横浜市立大学の論文
- 2005-05-31
著者
関連論文
- 上顎洞底挙上術における超音波骨メスの使用経験
- 歯槽膿瘍に対する炭酸ガスレーザー照射後に生じた顔面・頸部・縦隔気腫の1例
- 頬部に生じた動静脈奇形の1例 : 3D-CT angiography の有用性
- 唇顎口蓋裂患者の早期二次的顎裂部骨移植術における骨架橋形成に及ぼす因子の検討
- 高IgE症候群患者の抜歯に対する周術期管理の1例
- 顎関節に発生した結節性偽痛風の1例
- 顔面変形を生じた上顎歯根嚢胞の1例
- ビスフォスフォネート投与により生じた下顎骨壊死の1例
- 唇顎口蓋裂患者の早期二次的顎裂部骨移植術における骨架橋形成に及ぼす因子の検討