慢性痛を有する顎関節症患者へのストレスマネジメントに関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
顎関節症は現代病として近年歯科領域においては,齲蝕・歯周病と並ぶ三大疾患として増加傾向にある.顎関節症の病因としてはいまだ不明な点も多くあるが,素因・発症因子・持続因子が複合的に関与していると考えられている.本研究では,顎関節症の病因の一つであり,慢性痛への移行に大きく関与していると考えられる持続因子(心理社会的ストレス・行動特性・陰性感情・筋緊張など)をコントロールすることで,人間本来の持っている自然治癒力を向上させ,顎関節症の改善ならびに発症の予防が可能であると考え,心身医学的な観点から新しいストレスマネジメント・プログラムを試み,臨床的に検討した.対象は慢性痛を有する顎関節症患者40例で,顎関節の疼痛ならびに首・肩のこりなどの関連症状を長期に渡って持続していた.また,多くの患者が対人関係による心理社会的ストレスによる問題意識とそこから派生する陰性感情を持ち,心理検査からも軽度から中等度の抑うつ傾向および神経症傾向を示していた.本プログラムでは,イメージを活用したリラクセーションと患者の行動特性を活用したカウンセリングを併用し,プログラム実施前後の心理調査ならびに臨床評価を行った.その結果,顎関節症の疼痛度・機能障害度・日常生活支障度は,プログラム前後において統計学的に有意(P<0.01)に改善が認められた.また,プログラム終了1年経過時の心理検査および面接においても改善が認められた.このことは,プログラムを通して習得した自己コントロールを身につけ活用していくことで,持続因子を軽減させ,患者本来の自然治癒力を向上し,顎関節症状を悪化することなく管理できたことが示された.
- 2005-01-31