通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童に関する調査研究 : A市の児童を対象とした学習障害・注意欠陥/多動性障害・高機能自閉症の疑いのある児童に関する実態調査
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
平成13年に文部科学省から提言された「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」では、小・中学校の通常の学級に在籍する軽度の障害のある児童生徒に対して、特別な教育的支援を積極的に進めていく方針が示された。今後、通常学級において、一人一人のニーズに対応した、特別な教育的支援の在り方を検討していくためには、そこに在籍する児童生徒について調査を行い、その実態を把握することが欠かせないと考える。そこで、A市小学校の通常学級に在籍する児童1,201名を対象として、学習障害、注意欠陥/多動性障害、高機能自閉症等の特別な教育的支援を必要とする児童の実態を明らかにするため、質問紙による調査を実施し、対象児童の学級担任から1,142名のデータを得た。その結果は次の通りである。知的発達に遅れはないものの学習画(学習障害関係等)「問く」「話す」「読む」「害く」「計算する」「推論する」に著しい困難を示すと学級担任が回答した児童の割合は、4.3%(%信頼区間:3.1%〜5.5%)。行動画(注意欠陥/多動性障害関係等)で「不注意」又は「多動性一衝動性」の問題を著しく示す割合は、2.6% (95%信頼区間:1.7%〜3.5%)。行動画(高機能自閉症関係等)で「対人関係やこだわり等」の問題を著しく示す割合は、1.0%(95%信頼区間0.4%〜1.6%)であった。また学習画と行動画ともに著しい困難や問題を示す割合は1.8%(95%信頼区間:1.0%〜2.6%)、学習画か行動画のいずれかに著しい困難や問題を示す割合は5.6%であった。これらの割合は3、4年生の時期に高い数値を示した。児童の学習画、行動画での困難や問題は多種多様で、学級担任はそれら問題の対応に苦慮し、同時に様々な工夫をもって対処を試みていた。今後の通常学級での支援の在り方、そして軽度発達障害に対する教育の充実のため、研修の実施や環境整備等の必要性が示唆された。
- 和歌山大学の論文
- 2005-02-28
著者
関連論文
- 通常学級における「ひらがな」チェックの有用性について
- Reversible posterior leukoencephalopathy syndromeを呈した4症例の検討
- 通常学級における「ひらがな」チェックの有用性について
- アスペルガー症候群と非言語性学習障害 (アスペルガー症候群の子どもの発達理解と発達援助) -- (アスペルガー症候群を理解する)
- 通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童に関する調査研究 : A市の児童を対象とした学習障害・注意欠陥/多動性障害・高機能自閉症の疑いのある児童に関する実態調査
- 学校教育現場における発達支援課題と大学の役割 : 和歌山県下の学校へのアンケート調査から
- 軽度発達障害の子どもたちへの支援ネットワークの現状と課題 : 和歌山市および周辺地域における考察
- ADHDの認識と通常学級における在籍の可能性について : 誤解のまえに理解を
- 皮質形成異常 : 基礎と臨床
- ADHDと広汎性発達障害の合併 (ADHDの理解と援助) -- (ADHDを取り巻く諸問題)
- ADHDを取り巻く様々な問題、視点 (ADHDの理解と援助) -- (ADHDを取り巻く諸問題)
- 薬物治療と非薬物治療 (ADHDの理解と援助) -- (治療および指導)
- 診断基準の変遷と現状 (ADHDの理解と援助) -- (ADHDを理解する)
- 序章 ADHDの可能性 (ADHDの理解と援助)
- ADHDの理解と援助
- 通常の学級に在籍する発達障害のある児童への早期気づき : 「気づきのポイントシート」作成の試みを通して