90年代の金融法制改革による競争的な市場の実現(<特集>混迷する財政・金融構造改革 : 90年代以降の政策分析)
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概要
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日本の金融制度は,かつては「護送船団」と言われるほど微細にわたる規制に服していたが,1990年代に行われた大小さまざまな制度改革の結果,現在では,規制ではなく競争原理に立脚する制度が実現するに至っている.それは,一面では90年代に入る前から続けられてきた自由化の完成であるとともに,他面,競争の結果として個別行が破綻しても金融システム全体が危機に陥らないための制度整備の過程でもあった.ところが,こうした制度改革にもかかわらず,借り手から見ると,銀行取引の市場は,なお十分に競争的ではないように観察される.その理由としては,借り手と貸し手の間に情報の偏在が生ずるという与信取引に固有の問題が,競争原理の単純な作用を妨げているという可能性があろう.仮にそうだとすれば,情報の偏在の問題を解決するような取引のしくみが開発されなければならないが,近時普及しつつあるコベナンツ付き融資は,その一つとなり得るのではないかと考えられる.
- 東京大学の論文
- 2005-02-07