1990年代の日本女性の労働供給に関する考察
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概要
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本論では,経済社会学のアプローチを用いて,90年代の日本の女性,特に既婚女性の労働供給について分析を行う.その際,90年代の日本市場で進んだ「就業形態の多様化」に注目する.「就業形態の多様化」は,女性の選択にどのような制約(機会)をもたらしたのか.更に,夫婦の市場での労働供給と性別役割意識および家庭内での役割分業の関連性について分析し,市場と家庭という2つの制度の関連性と,それが90年代の女性の就労行動に与えた影響について考察する.また「就業形態の多様化」が女性の就労選択に与えた影響を検討するにあたって労働時間に注目し,従来の「量的な時間」ではなく「質的な時間」という概念を導入する.本論では,第1に,90年代における「就業形態の多様化」は正社員として働く女性とそれ以外(特にパートタイム労働)の女性間の2極化に寄与したこと,また,第2に,「就業形態の多様化」がもたらしたものは,家庭責任を担う多くの女性にとっての「出口のない機会」であり,妻が夫に同調する夫婦の労働供給パターンの再生産であったことが指摘される.
- 東京大学の論文
- 2003-03-31