人権条約に付された留保をめぐる争いが示唆するもの(<特集>国際関係法研究動向レビュー)
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概要
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1990年代以降,「人権条約に付された留保」という主題をめぐって極めて多くの論考が物されている.この主題をめぐる今日の議論の興隆をもたらした契機の一つは,1994年に国連規約人権委員会で採択されたGeneral Comment No.24(52)である.同コメントは,条約法条約の留保制度(留保を他締約国による反応によって処理する制度)は,人権条約に付された留保を適切に処理し得ないと主張し,人権条約に付された留保へのその適用可能性を否定した.これに対して,英米仏三ヶ国政府や,1996年にAIlan Pelletが国連国際法委員会に提出した報告書は,条約法条約の留保制度は人権条約を含むあらゆる条約に適用可能であるとの主張を展開した.このような人権条約に付された留保をめぐる議論が喚起しているのは,条約法条約の留保制度の見直しということにとどまらず,その理論の多くを契約法的観念の摂取及び類推に依拠してきた条約法そのものの見直しの必要である.
- 2003-03-31