WTO加盟の中国農業への影響 : 土地集約型農産物の輸入拡大と労働集約型農産物の輸出競争力(<特集>WTO加盟後の中国)
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概要
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これまで約20年間の高度経済成長に伴い,中国農業,特に土地集約型農産物の比較生産性が急速に低下した.これは,穀物など土地集約型農産物を比較劣位化していると同時に,労働集約型農産物の比較優位をもたらしている.WTO加盟は,穀物等の輸入増と国内価格の低下を意味する.こうした中で,深刻な農業余剰労働力を抱える中国は,雇用を確保するためにも,潜在的に優位性のある野菜や食肉及びこれらの調整品の輸出を増やさざるを得ない.農産物の競争力を高めるためには,これまで各方面の利害関係で改革が進まれなかった農産物流通と金融システム,農家の組織化,農業労働力の農外移出,政府の支持体制,縦割り行政など,多方面にわたる総合的な体制改革を強力に推し進める必要がある.この意味で,WTO加盟は,中国農業にとっては衝撃というより恵みと捉えたほうがよいかも知れない.なお,中国の穀物等の輸入が増えると言っても,国際供給能力の限界などから,需要の絶対的な部分は国内に依存せざるを得ないことが言えよう.
- 2003-03-31