ラットにおける海馬機能およびタンパク質発現に対する母子分離の影響
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概要
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近年,幼少時期の生育環境が思春期,成熟期の脳の特定部位の海馬における機能的,形態学的変化に影響を与えることが報告されている。本研究では,1)新生児期に母子分離ストレスを与えたラットにおける恐怖条件付けによるすくみ行動の変化に関する検討,2)新生児期母子分離ストレスによるラット海馬タンパク質発現の変化に関する検討を行った。6週齢のSprague-Dawleyラットを用い,行動学的には恐怖条件付け,自発運動量測定,高架式十字迷路を,タンパク質発現については抗体アレイ,ウエスタンブロッティングを用いて検討した。行動学的検討では,母子分離によって自発運動量や不安行動に影響を及ぼすことなく恐怖条件付けによるすくみ行動が減少した。タンパク質発現解析では,母子分離によりラット脳の海馬においてインテグリンβ3の発現が減弱することが見出された。本研究の結果から,恐怖条件付けにおけるすくみ行動時間の減少は母子分離による海馬依存性記憶の障害と関係しているものと考えられ,その分子生物学的機序として海馬におけるインテグリンβ3の発現の低下が関与している可能性が示唆された。
- 2004-12-28