イギリスの金融市場改革とSecondary Banking Crisis : わが国の「バブル」経済との比較研究という視点から(山本英男先生退職記念号)
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概要
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近年,金融の自由化・規制緩和が行われた多くの国で,「バブル」の発生と金融危機を経験してきた。何故,金融市場改革のなかで金融システムは不安定化するのか。この問題の解明は,今日,刻下の急務を要する課題の一つである。イギリスでは,割引市場を中心とする伝統的な短期金融市場と新たに興隆した並行市場との市場統合を果たすために,1971年9月CCCが導入され,金融の自由化・規制緩和と市場改革が推し進められた。しかしその直後,不動産「バブル」とSecondary Banking Crisisと呼ばれる金融危機が発生した。わが国の1980年代後半の「バブル」の発生・破綻と酷似した過程を経験したのである。これらのことは,「バブル」の発生は決して偶発的・例外的な経済現象ではなくて,金融市場が変貌していくなかでプルーデンス政策と市場規律に強制されながら,個別銀行資本の「流動性」の確保を目指すそれ自体としては「健全な」銀行行動が,かえって総体としての金融システムの不安定化を惹起するという,「合成の誤謬」とも言うべき市場経済固有の転倒性が,不可避的に貫徹した結果生みだされたものに他ならないことを示している。Secondary Banking Crisisは,この意味で,発達した金融システムが内包する固有の脆弱性を,金融自由化時代の開始とともに先駆的・普遍的に表現した金融危機であった。
- 2005-03-31
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