量的緩和政策と不良債権問題,構造問題 : 論点整理を中心に(下澤洋一先生追悼号)
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概要
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量的緩和は4年目を迎えた。金融政策論議は,景気の循環的回復,株価底入れなどから,現在のところ小休止状態にある。しかし,日本経済の基盤は依然脆弱で,デフレも持続しており,量的緩和が奏効したわけではない。回復が頓挫すれば,緩和要求が再び高まる公算も強い。長期間にわたる金融政策論議が未だ大きくすれ違っている背景には,デフレ問題が不良債権問題,構造問題などとも絡んで,日本経済の長期停滞を如何に捉えるかという論議と密接不可分になったことなどがある。近年の政策論議の論点を横断的に整理するため,主要論者の主張を,日本経済長期低迷の主因という視点でグループ化すると,デフレ主因説,構造問題主因説,不良債権問題主因説などに分けられる。論点をさらに細分化して再整理した上で,特に鍵となる論点を傍証的に検証した結果は,日本経済の長期停滞・デフレ化の要因としては,財政・金融政策のミスもあったが,基本的には企業の資本効率低下,地価神話の崩壊も含めた構造問題が主因で,金融仲介機能不全論には疑わしい面も強いと考えられる。望ましい政策対応には奇手妙手はなく,様々な政策の組み合わせでいく他なく,金融政策では副作用を考慮すれば,「デフレ脱却のためには如何なる手段も辞さず」との領域までは踏み込むべきではない。
- 2004-03-31