Alternative Agro-food Movement in Contemporary Japan
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概要
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本稿では,日本における地域の食に関する運動について,発足の背景,展開過程を整理し,その展望についてアメリカとの比較を通して考察する.慣行栽培や市場流通など従来の農業のあり方と異なるものとしてオルタナティブな農業運動を定義し,1990年代後半に始まった地産地消運動に注目する.地産地消運動は地元で生産された農産物を地元で消費しようというものであり,「地域」という面的な範囲を活動範囲とするとともに,生産者と消費者がその地域を共有しているという点で従来のオルタナティブ運動と一線を画している.しかし,その多くは国内農産物の販路拡大を目的とした農林水産省の政策の下,政府や自治体が主導した運動となっている.アメリカでは地域の食に関する運動には日本よりも長い歴史があり,議論の蓄積もある.既往の文献から地域の食に関する運動の目標,進むべき方向性などを整理した.アメリカでは地域の食に関する運動が食の安全,安心のみならず,地域の環境問題,地域における社会的公正の実現,民主的な地域運営など様々な社会問題を解決する手段として認識されている.一方,日本の地産地消運動は販路拡大の手段としてのみ認識されており,その限定的な位置づけのために食の安全,安心,食料安全保障を確保するための運動に矮小化されてしまう危険性がある.そこで,本稿では「食」と「地域」という概念が社会的公正,民主的な意思決定のための重要な手段になることへの認識の必要性を指摘し,地産地消運動の参加者それぞれが,食を入り口として地域資源としての環境問題,地域住民にとってのよりよい社会のあり方へとその関心領域を広げていくことが,地域の食運動の可能性をひらくものとして整理した.
- 千葉大学の論文
- 2005-03-31
著者
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