異状死の判断と届出義務 : 都立広尾病院事件を参考として(シンポジウム(第58回東邦医学会総会))

概要

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医師法21条の届出義務について考える際には,憲法38条1項に反しないかという点を踏まえる必要がある。なぜなら,同条項は,「何人も,自己に不利益な供述を強要されない」と規定しているからである。この点について,最高裁判所は,死体を検案した結果,外表上の異状があることが認められた場合には,医師法21条に基づく届出義務を課しても憲法38条1項には反しないと判断している(都立広尾病院事件)。したがって,このような場合には,届出義務があることになる。その一方,合併症による死亡の場合,明白な過失があるが外表上の異状がない場合,死因不明であるが外表上の異状がない場合には,最高裁判所の判断からすると,届出義務はないものと考えることができる。しかし,これらの場合であっても,遺族の要望,社会的要請,紛争の早期解決などの諸要素を考慮のうえ,届出をしておくのが相当な場合もある。実際,医師法21条に基づく届出義務はないものの,届出をしておけば早期解決がなされた可能性のある事案もある。このように届出を行うべきか否かは事案によって異なり,そのうえ,届出には24時間という時間的な制限があることからすると,各医療施設において,速やかに届出を行うべきかどうかを判断する体制作りが急務となっている。
東邦大学の論文
2005-07-01

著者

桑原博道
仁邦法律事務所

異状死の判断と届出義務 : 都立広尾病院事件を参考として(シンポジウム(第58回東邦医学会総会))

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