対人認知の多次元的研究III : ラグビー選手の自己評定とポジション認知
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概要
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本報では所属する成員全てが評定対象を熟知しているという意味で,競技スポーツ集団(早稲田大学ラグビー部)に所属する競技者にラグビーのポジションを刺激として評定してもらい,熟知している対象と自己評定との関係を分析した.早稲田大学ラグビー蹴球部員107名を被検者とし,ラグビーの15のポジションと自己評定を25の形容詞行なわせた.クラスター分析を援用し,自己評定により被検者を5つのクラスターに分割し,クラスター毎のポジション評定プロフィールをINDSCALにより吟味した.INDSCALによって析出された次元は1)『勇敢で適切な判断力(brave and appropriate judgment)』,2)『心身の強靭さ(mental and physical toughness)』と解釈された.その結果,自己評定プロフィールには差異を示すクラスター間においても,ラグビーのポジションの認知に関してはポジションによって自己評定クラスター間のウェイトが異なるものが存在することが明らかになった.一方では,自己評定には関係なく一定した認知傾向を示すポジションも存在することが明らかになった.これは,ポジションによって,その役割が部員に共通の理解を持たれているものとそうでないものが存在することを表わしていると考えられ,特に,共通の認知傾向が表われないポジションのウェイトに自己評定の相違が反映される可能性があることを示唆した.
- 1990-03-25