「ヴェズレー」におけるペイターの建築観
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概要
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ペイター(Walter Pater, 1839-94)は1894年、フランス中世の聖堂建築に関する二篇のエッセイを発表した。「アミアンのノートルダム大聖堂」("Notre-Dame d'Amiens")と「ヴェズレー」("Vezelay")である。前者はゴシック様式の大聖堂を、後者はロマネスク建築の代表例であるサント・マドレーヌ聖堂をとりあげている。これらの作品は「フランスの大聖堂」("Some Great Churches in France")というタイトルで『ナインテイーンス・センチユリー』誌の3月と6月号にそれぞれ掲載され、のちに『雑纂』(Miscellaneou Studies)に収められた。1893年ペイターの生涯における最後の旅の体験から生まれたこれらのエッセイには、聖堂の建つ土地の霊の印象と、実際に聖なる空間を廻って感知したことがらが見事に織り込まれている。建築に関する該博な知識を駆使し、精妙な洞察力でもってペイターが明らかにしたフランス中世の聖堂建築の特徴とは何か。彼が追求する理想の建築様式とはどのようなものなのか。幾世紀にもわたる人間の歴史が刻みこまれているヴェズレーの聖堂をめぐって、建築における見られるよりはむしろ感知される精神性というものをペイターがどのように読み解いているのかを考察したい。
- 2005-03-23