リカードウ以後の経済学の諸相 : ヒューウェル研究を通じての展望と課題
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概要
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科学史と経済学史との学際的接近という近年の動向に刺激されるかたちで、ヴィクトリアン科学の泰斗であるヒューウェルに関する諸研究が経済学史家の手によって活発に行われるようになった。しかし、これらの諸研究がヒューウェルを取り上げるコンテクストは、方法論・道徳哲学・制度論・数理経済学など多岐にわたっているため、諸研究はややもするとコンテクスト間の相互関係を見落としがちのきらいがある。そのような反省に立ち、本稿では近年の諸研究のサーヴェイを通じて以下の諸点を示唆する。第一に、経済学方法論の分野では、ヒューウェルはケンブリッジ帰納主義者の領袖として扱われてきたが、近年の科学史研究に照らせば、そのような分類には無理があること。第二に、ヒューウェルの正統派経済学批判は、当時のアングリカン神学の側からする経済学へのアプローチの一類型として解釈できること。第三に、経済学の制度化に対するヒューウェルの態度の変化は、彼の方法論的立場の深化に対応したものと考えられること。第四に、ヒューウェルの数理経済学の試みは、彼自身の消極的意図のため、イギリス経済学に深く根付くことはなかったこと。最後に、ヒューウェルはリカードウ以後の大空位時代の時代精神を象徴する人物であったこと、である。
- 2005-04-30