自由貿易協定(FTA)とわが国の繊維アパレル産業
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
わが国もここに来て自由貿易協定(Free Trade Agreement………FTA)締結への動きがあわただしくなっている。戦後ながらくGATT・WTOの自由・無差別を標榜する貿易体制に基づく対外通商関係を維持・享受してきた日本政府も1980年代以降のEC、NAFTA等に代表される地域経済統合への大きな趨勢のなかで、21世紀に入って漸くFTAへの取り組みを本格化させている。そこでこの小論では、現在交渉が進められているアジア諸国とのFTA締結が日本の繊維アパレル産業にどのようなプラスとマイナスのインパクトを及ぼすのかについて検討することにしたい。結論として、(1)FTA締結は不可避の方向であること。締結をしないで時代の流れから取り残されれば、わが国の産業にマイナスの影響が生じることはメキシコの例(政府の試算によると、同国とFTAを締結しない場合、産業界には年間約4千億円の損失が生じる)でも明らかであること(2)わが国当該産業は今やアジアとの産業内分業関係にあり、多くの業種・製品で相互補完関係にあるだけに概ねプラスが多いこと、(3)しかし、産地を中心に雇用等へのマイナスの影響も無視できないこと、(4)業界・企業としてはFTAを機にアジアの繊維アパレル産業のダイナミックな力を活用してチャレンジし、生き残りを図るべきこと等である。
- 2004-12-31