「三井大元方勘定目録」についての再論序
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概要
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大元方勘定目録(大元方開元目録)をその大要を検討した主要論稿を紹介することによって、その何たるかを明らかにする端緒とするのが目的である。江戸期の宝永7年(1710年)に創設されたといわれる三井家の決算簿である「大元方勘定目録」を再び研究対象とするにあたって、その全般的把握からその研究の第一歩としようと考えた。従来、「大元方勘定目録」を中心とする三井家の帖簿の研究は、その発生、背景をめぐって展開してきた。本稿では、「大元方勘定目録」の創成期の技術的内容にポイントをおいて、概括的に明確にしようと考えた。従来、三井家文書は公開されず、その帖合法は相当に発達していたといわれながら、内容は不明であった。安岡重明教授がこれを閲覧する機会を得て、論考されたものを、小倉栄一郎教授は、その論文中の引用史料を引用し検討されて論文にまとめあげられた。私は、この小倉栄一郎教授の論文引用史料等を利用することによって、大元方創設期の大元方勘定目録の内容を概括的に説明することを試みた。宝永7年(1710年)に創設された大元方から始められた「大元方勘定目録」は、その最初の部分は、「大元方開元目録」と呼ばれ、開始貸借対照表に相当するものと考えられる。大元方の開設期の三井家の企業全体の正味身代の計算をまず、これは行なっている。各科目の解釈には研究者によって一定しない点もあるので、小倉栄一郎教授の考え方を基準として展開したのである。すなわち、差引正味金額を3段階に分けて算出していると考える。その各段階にそれぞれの意味があると推察される。解釈の余地はあるが、結論として、算出される額が、資産-負債=資本の恒等式に一致する計算になると考えるのである。そして、原本金額を( )に入れて示し、説明のための銀換算額をまた表示している。
- 2004-03-31