道州制と地域間財政調整 : ドイツ型財政調整手法を用いたシミュレーション
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究の目的は、日本における現行の地方交付税制度と、ドイツで採用されている水平的財政調整システムとを比較検討し、道州制下での地域間財政調整のあり方を考察することである。現行の地方交付税制度に対しては、これまでにも多くの問題点が指摘されてきた。国(総務省)の管理と裁量のもとにあり、地方に財政規律の弛緩をもたらす可能性のあるこの制度は、地方分権改革後の政府間補助金システムとしてふさわしいとは言えない。そこで本稿では、分権改革の行き着く先の一つとして道州制に移行した場合を想定し、現行の地方交付税制度に代わる財政調整制度として、ドイツ型水平的財政調整システムを前提としたシミュレーション分析を行う。ドイツ型水平的財政調整システムのもとでは、税源が大幅に地方へ移譲され、州間の交付金のやりとりによって財政調整が行われる。シミュレーションの結果、ドイツ型水平的財政調整システムの方が、現行の地方交付税制度に比べて、一人当たりの金額において地域間の財政格差をより縮小させることが示された。またこの制度のもとでは、交付金の配分に国の関与がなく、州にとっても税収を増加させるインセンティブが働くため、地方に過度の配分を行っていると指摘される現行の地方交付税制度と比べて、分権社会に適していると言うことができる。それと同時に、シミュレーション分析によって、東京一極集中という現在の日本が抱える問題点も浮き彫りとなった。
- 2005-03-31