政策設計における「人間モデル」の問題
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概要
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従来、公共政策の策定に際しては合理的経済人が前提とされることが多かった。人々は利己的であり、道徳観や倫理観に訴えることは有効でない。むしろ彼らの利己心に訴える経済的なインセンティブ・メカニズムが必要である。また、ときに人々が利他的に振る舞うことがあったとしても、それを政策的に活用することは困難である。だが、このような合理的経済人を前提とした政策設計は常に適切であるとは言えない。第一に、利己主義を前提とした政策はますます人々の利己主義を助長させる恐れがある。第二に、情報の非対称が存在するケースでは、インセンティブは十分に機能しない可能性が高い。第三に、合理的経済人を前提とした議論は、嫉妬などの利己心以上に「悪い」動機が存在しうることを想定していない。以上のことから、より適切な政策設計論として公共心の活用を考える必要がある。その一つとして、現に存在する利他的な人々を選抜(スクリーニング)し、適当な仕事を委ねるという考え方がある。だが、このような方策では社会全体の人々の行動に起因する問題を解決することはできない。実現困難ではあるものの、できるだけ多くの人々の公共心を育てる必要がある。そこで重要となってくるのが、地方分権である。徹底した分権により、人々の参加と自立を促し、濃密なコミュニケーションを可能にすることで、いくらかなりとも人々の公共心が育まれるかもしれないからである。
- 2004-03-31