『悪の華』の成立過程から見えてくるメッセージ(文学・文化編)
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概要
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『悪の華』初版から削除された「禁断詩篇」を手掛かりに,最初に,『悪の華』の前身として顔を出しながら未刊に終わった二つの詩集『レスボスの女たち』(1845)と『冥府』(1848)の中核と見做される詩を吟味する。そして,ボードレールが彼の文明史観に基づいて美術批評でいち早く提起した「現代性」の美学を明らかにする。さらに,『冥府』の方が,キリスト教という狭い枠内で解釈されがちなロココ風な題の『悪の華』よりも内容に相応しいことを説明する。次に『悪の華』初版(1857)と第2版(決定版)(1861)を比較する。『レスボスの女たち』の出版予告から『悪の華』第2版が出されるまでには16年の歳月を要した。この期間は近代社会へと変貌する時期である。それ故第2版は近代社会を特徴づける多くの要素を含むものとなり,この詩集を色々な角度から読むことができるのである。
- 2005-03-18