生鮮食料品流通システムの構造と変化 : 卸売市場の機能不全と消費者起点の可能性(流通システム)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
近年、日本では生鮮食料品流通に占める卸売市場の地位低下が著しい。卸売市場制度は価格形成の透明性を確保することを第一の目的にしたシステムであり、質的斉合よりも量的斉合のための制度である。そのため、卸売業者はその本質である自立的な社会的品揃え形成機能に制度面で縛りがかけられており、公共性を重視する卸売制度と現実の生鮮食料品流通システムが求める卸売業者の機能との間に乖離があるといえる。したがって、今日の市場外流通の拡大は、既存の卸売市場を経由した生鮮食料品流通システムに対する不満足を象徴しているものと考えられる。そのひとつは、スーパー・チェーン企業の成長に伴い、生鮮食料品の商品分野にチェーン・オペレーションの論理を持ち込もうとした動きである。またもうひとつは、学習する消費者の登場である。その存在は、供給発想を主体として組み立てられていた既存の生鮮食料品流通システムを、消費者起点の価値連環流通システムに転換させるインパクトを与えたといえる。その背景には、生鮮食料品が物理的価値だけでなく、安全・信頼などにみられるサービス価値と融合した商品特性をもつにいたったことがある。消費者起点の価値連環流通システムは、消費者を主役とし、企業間の深い関係性を前提にした価値創造プロセスである。そこで必要な条件は、消費者ニーズをより深く理解することと、異なる専門的能力をもった企業間の情報共有と協働の仕組みづくりを柱として流通システムを再構築することである。
- 千葉経済大学の論文
- 2004-07-15