マウス脳におけるニューロカン遺伝子の発現と局在
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概要
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プロテオグリカンは,細胞外マトリックスおよび細胞表層に存在する代表的な複合糖質である。哺乳動物の神経組織に特異的に発現するプロテオグリカン遺伝子の一種であるニューロカンは,N-CAM (neural-cell adhesion molecule), Ng-CAM (neural glial-cell adhesion molecule)/L1/NILE (nerve growth factor-inducible large external glycoprotein), TAG-1 (transiently-expressed axonal glycoprotein-1)/axonin-1,アンフォテリン,ヘパリン結合成長関連分子,テネイシンなどの細胞接着分子に結合し,神経細胞接着作用および神経突起伸長を強力に阻害することが,現在までにわかっている。これまでのニューロカンの研究は,ラットの神経組織を用いたものがほとんどである。そこで本実験では,発達段階の異なるマウス脳における,ニューロカン遺伝子の発現と量的変化および発現部位を,逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Reverse transcription-polymerase chain reaction, RT-PCR)とイソサイチュハイブリダイゼ-ション(In situ hybridization, ISH)により解析し,その機能を推察した。RT-PCRの結果から,胎生16日から成熟期のマウスの脳にニューロカン遺伝子の発現が認められ, mRNA量は胎生後期から徐々に増加して生後7日にピークを迎え,その後減少することがわかった。またISHの結果からニューロカン遺伝子の発現は,胎生14,16,18日と生後7日では,大脳皮質,海馬などの辺縁系,視床,視床下部,上丘,下丘,橋核,延髄,小脳内顆粒細胞層に認められ,生後30日では,小脳顆粒細胞層,プルキンエ細胞,橋核にしか見られなかった。以上の結果を要約すると,ニューロカン遺伝子は胎生14日頃に大脳皮質や辺縁系で発現し始め,脳の発達による神経突起の伸長と同様の道筋をたどって下位脳幹に向かって発現部位を拡大していき,生後7日をピークにし,以後縮小していった。従ってニューロカンは,胎生後期,生後初期に大脳皮質から下位脳幹へ向かう神経突起の伸長の誘導と関連すると考えられ,哺乳類の神経回路ネットワークの構築に深く関与していることが示唆された。
- 明治大学の論文
- 2000-07-30
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