韓国会計研究院研究報告書第14号『会計の透明性と国際会計基準に対する能動的戦略』(1)(川島實教授退職記念号)
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概要
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国際会計基準委員会〔審議会:訳者〕が制定した国際会計基準は,最近,韓国会計基準の制定・改正時におけるベンチマークとしての基準となっている。すなわち,韓国会計基準委員会は,会計基準制定時に基本的に国際会計基準の受け入れを原則とし,必要に応じて韓国企業の実情を反映しうるように若干の修正を施している。韓国会計基準委員会のこのようなアプローチは,国内外において批判の対象となってきた。国内企業の一部は,新たに制定された韓国会計基準があまりにも複雑で,韓国企業の実情にそぐわないという意見を提示している。外国の投資家は,韓国企業の財務報告書を十分に活用しておらず,依然として韓国会計基準と国際会計基準との間には少なからず差異が存在すると指摘している。その上,国際機構は,韓国が国際会計機構に十分な貢献すら行なっておらず,国際会計基準を自国の会計基準のベンチマーク基準として使用していると批判している。当該報告書の目的は,韓国の会計基準設定機構が取り扱いうる能動的な国際戦略を開発しようとすることにある。このような戦略を樹立するために,本報告書では国際会計基準委員会財団と国際会計基準委員会〔審議会:訳者〕を取り巻く政治的環境および外国会計基準設定団体の国際戦略を分析した。もっとも望ましい国際戦略は,国際会計基準委員会財団と国際会計基準委員会〔審議会:訳者〕の活動に積極的に参画すると同時に,国際経済において占有している韓国経済の規模に相応しい支援を行なうことである。アメリカおよびイギリスの会計団体との協力は,このような能動的な戦略の重要かつ必須的な部分である。主たる革新的戦略は,Convergence(統合化〔収斂:訳者〕)計画の樹立および発表,資金の拡充,人的資源の確保,広報戦略などに区分してみることができる。何よりも,韓国会計基準委員会は,オーストラリア会計基準委員会のように国際会計基準委員会〔審議会:訳者〕Convergence計画を樹立しなければならず,国際会計基準委員会財団と国際会計基準委員会〔審議会:訳者〕に物的・人的資源を支援しなければならない。そのためには,韓国金融監督委員会は,韓国会計研究院/韓国会計基準委員会に資金を支援しなければならない。このような観点から,アメリカのサーベインズ・オックスリー法(2002: Sarbanes-Oxley Act of 2002)が公式にアメリカのFASBを会計基準設定機構として承認し,資金供与についての内容を含んでいるという点で注目する必要がある。韓国公認会計士会,さらにはその他関係機関も能動的戦略を効果的に行なうために韓国会計研究院/韓国会計基準委員会と協力しなければならない。もっとも重要なことは,すべての関係者がより広い国際的視角と思考方式を持たなければならないということである。これがなされることで,上述のすべての戦略が成功裏に果たされうる。
- 龍谷大学の論文
- 2004-12-15