陣痛の発来と顆粒球コロニー増殖因子との関連について
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概要
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[目的]メトロイリーゼによる陣痛誘発の際の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の変化を比較解析することで,炎症カスケードの作動が誘因と推測されている陣痛発末とG-CSFとの関連を明らかにすることを目的とした。[対象と方法]インフォームド・コンセントが得られた正期産の妊婦を対象に以下の検討をおこなった。1.メトロイリーゼ留置による分娩誘発時に,留置直前,留置後6時間および12時間の時点で末梢血白血球数および血清G-CSF濃度を測定すると同時に陣痛発来状況を分娩監視装置などにより評価し,両値の変化と陣痛との関連を解析した(n=15)。2.陣痛発来群(正常分娩4例)と陣痛未発来群(選択的帝王切開分娩4例)の胎盤組織中G-CSF mRNA発現状況をRT-PCR法により評価した。3.同様の胎盤に対し胎盤組織中G-CSF蛋白発現状況を,免疫組織染色法をおこない確認した。[結果]メトロイリーゼ留置による陣痛誘発モデルでの検討では,血情中G-CSF濃度は,留置直前29.2±3.4pg/ml,留置6時間後49.8±6.5pg/ml,12時間後71.5±17.8pg/mlと推移し,留置直前から留置6時間後までの誘発早期にp=0.005と有意な増加が認められた。一方,同時に比較した末梢血白血球数の変化は留置後6から12時間までの誘発開始後後期に有意な変化(p=0.008)がみられた。同対象を陣痛発来群(n=9)と陣痛未発来群(n=5)に分けて解析した結果,血清G-CSF濃度は陣痛発来群で留置直前29.1±5.0pg/ml,6時間後58.7±8.3pg/ml,12時間後81.0±25.4pg/mlであり,陣痛発来群の留置直前から6時間後までの間のみでp=0.003と有意な増加が認められ,陣痛未発来群では有意な変化は認められなかった。一方,末梢血白血球数の変化は陣痛の有無に関連していなかった。胎盤組織中のG-CSF mRNAは,陣痛発来群で4症例中3例で明らかに検出されたが,陣痛未発来群では全例検出されなかった。同じ胎盤の免疫組織法による検討では,G-CSFは陣痛発来群の絨毛合胞体栄養膜に局在しており,陣痛未発来群の胎盤組織では染色陰性であった。[結論]G-CSFは陣痛発来に一致して発現を増強していたことから,陣痛と何らかの関連関与があるものと推察された。