卵巣局所でのインターロイキン-6の変動と黄体退行との関連について
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概要
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[目的]ヒト自然月経周期において卵巣局所でのインターロイキン-6(IL-6)およびそのレセプター発現を分析することにより,卵巣機能調節におけるIL-6の役割,特に黄体退行との関連について検討することを本研究の目的とした。[方法]正常月経周期を有する婦人科手術施行予定患者のうち,充分な説明のもと同意を得られた女性37名から卵巣組織の一部と血清を採取して以下の検討を各卵巣周期で行った。1.血清中IL-6濃度の変動をELISA法により測定・検討した(n=37)。2.卵巣組織中のIL-6蛋白およびmRNAの相対的発現量変化を, TaqMan RT-PCR法(n=37)およびWestern blot法(n=21)により検討した。3.卵巣組織中のIL-6, gp130およびIL-6Rαの局在を免疫組織染色法により検討した(n=8)。[結果]血清中IL-6濃度は,卵巣周期中に有意な変動を認めなかった。IL-6 mRNAの相対的発現量は,卵胞期卵胞組織(1.547±0.937, n=18)および黄体期前中期黄体組織(2.125±0.921, n=ll)に比べ,黄体期後期黄体組織(4.464±2.045, n=8)において有意に高かった(p<0.05)。さらにIL-6蛋白の相対量も,卵胞期の卵胞組織(0.751±0.049, n=8)や黄体期前中期の黄体組織(0.762±0.104, n=6)と比較して,黄体期後期の黄体組織(0.935±0.070,n=7)で有意に高値であった(p<0.05)。免疫組織染色において,IL-6は主に黄体細胞と卵胞類粒膜細胞で染色され,莢膜細胞の一部でも染色陽性であった。gp130は黄体細胞,顆粒膜細胞および卵巣間質の血管内皮細胞で染色されていた。IL-6Rαは黄体細胞,顆粒膜細胞および莢膜細胞で染色陽性であった。[結論]自然周期中のヒト卵巣において,IL-6はおもに退行期黄体で産生されていることから,黄体退行機序に深く関与しているものと推測された。